2012/08/06

お知らせ

2ヶ月前に随分無礼なメールを受け取った。ブログに療養中と書いてあるから私が病気であることは知っている。病気のことは訊かないから、自分の幸せな現状を報告するといった内容だった。彼女が元気そうで幸せなことは何よりだが、私に対してお大事にの一言もなく、あくまで彼女のテンション本位の一方的な態度に、些か唖然とせざるを得なかった。病気の人に「療養中のことはブログで知っているから敢えて訊きません」という文章をわざわざ本人に送るものなのだろうか。受け取ったときにどんな思いをするか分かっているのだろうか。気遣いという言葉を頻繁に口にする人ほど、案外、こんなことを平気でしてしまうのかも知れない。嫌な思いで2ヶ月が過ぎた。

ブログが引き金になったことは否めず、再開する気力を失ってしまいました。残念ですが、本日をもって終了させていただきます。有り難うございました。

2012/04/20

お知らせ

只今、療養中につき来月より週一程度のペースで更新しようと思います。定期的に見てくださっている方には申し訳ないのですが、よろしくお願いします。

2012/03/25

お知らせ

ちょっと忙しくなってしまいました。四月半ばより再開致しますのでよろしくお願い致します。今後、音楽と映画鑑賞(主に新作)の話題はフェースブックで、アンティーク・カードを始めとしたその他のトピックをブログで扱うことにしました。

それでは、みなさま、次回の更新まで愉 しくお過ごしくださいませ。

2012/02/26

魔法の小箱

目が覚めたら12時10分だった。港から正午きっかりに聞こえるはずの汽笛さえ知らなかった。参ったものだ。子どものころから睡眠障害気味であまりうまく眠りに着けない。深夜は一番頭の冴える時間だから起きていたい時間ではある。誘眠剤はあまり効かないし、睡眠薬は時として暗闇の底まで降下して行くような感覚に陥いるせいか、寝覚めが悪いし後悔することが多く、自力で眠るようにしている。

小学校低学年からラジオの深夜放送を聞いていたのもこれが理由だ。夜はとてつもなく長いトンネルで、布団の中で何も出来ないのは苦痛だった。これを救ってくれたのが Sony のトランジスタ・ラジオ。ラジオが布団の中で温まるころには、小さな硬いプラスチックが魔法の小箱に変わるように思えて、イヤホンを着けたラジオを胸に押し当てていろいろな映画の話しや音楽を聞いていた。

当時の私にとって、ラジオは今のインターネットのような役目をしてくれていたと思う。好きに音楽を選べるわけではないけど、知らない世界をたくさん垣間見せてくれた。ロックの扉を開けてくれて、サイレントから新しい映画まで幅広く観ていたのも深夜放送のおかげだったと思う。


愛用していた 2R-21、1965 年発売だそうだから、父は発売直後に購入したわけではなさそう。こういうメタル系ではなくて、フロントは赤、バックは黒のプラスチック製だったような気がする

父は母との不仲で冷たくなっていた家の中に新しいものを持ち込んでは、修復に努めようとした。この Sony の小さなトランジスタ・ラジオもそんなひとつだが、私の基礎を作ったなどとは父も認識できてなかっただろうなあ。

抗議という名のエンターテインメント

昨年の newsweek 誌の特集で「dying city(廃れつつある町)」として紹介されたミシガン州グランド・ラピッズが、公式に抗議するために制作したビデオです。素晴らしい出来で、繰り返し見てしまいました。


市民 5,000 人が参加し、撮影のために車の通行を止めるなど、大がかりな抗議行動なのですが、平和で静かな行動です。アメリカ人ならよく知っている Don McLean のヒット曲「American Pie」を口パクさせることで、多くを語りつつも、市民は無言の抗議行動をしていることになり、アイロニーは大いに感じられます。

The Grand Rapids LipDub
http://www.youtube.com/watch?v=ZPjjZCO67WI&sns=em

朝露や

今回ご紹介するカードは Au Bon Marché のトレード・カードです。惚れ惚れするような、石版印刷の繊細さが愉しめます。

ピンクを基調に白をアクセントにしたドレスを着た女の子が、水をためた樽の側で、花を愛でています。朝顔のような花をつけた蔓植物ですけど、何の種類かは特定できません。

二羽の鳥はかなり栄養状態に恵まれているようで(笑)、顔がまるで人のよう (^^;; 少女とは人の言葉で会話していそうで、メルヒェンと言えばメルヒェンかも知れません...。微妙な二羽です。


サーモン・ピンクとモス・グリーンが基調で、グレイを加えた濁りはあるけれど柔らかな色味で統一されています。そのせいか、ソフト・フォーカスの写真を彷彿させるような効果が出ているように思えます。朝露がおりて、植物の匂いが一層強まる時間帯を見ているような気がしました。

スマートフォンのカメラなので、繊細さがお伝えできないのがとっても残念...。霧がかった幻想を導き出すほど繊細な色調のトレード・カードは贅沢だなあと、感動した一枚なんです。

2012/02/25

教育テレビは偉大

映画『Pina』を観てきました。観客が少ない上に、途中退場の方、爆睡して鼾をかいている方々など、なかなか厳しい状況の場内でした(爆)。


無理して観に行く映画ではありませんが、ダンスが好きであればそこそこ楽しめるのではないかと思います。Pina へのトリビュートなので、そもそも Pina Bausch って誰?という状態だと、前述のような厳しい状況に陥りやすいかも知れません。また、トリビュートである以上、「Pina、あなたは天才だ」という片道路線です。

3Dを観るには劇場へ足を運ばなければならなかったけど、正直な気持ちは、教育テレビか Youtube で無料で観たかった(笑)。NHK の教育テレビはこういう番組、普通に放映しますものね。ダンスはすごく楽しめました。

2012/02/24

援護射撃~その弐~

続きです。二曲目の『I fought the Law』が圧巻。何曲目か忘れましたが、スカの『Wrong'em Boyo』は珍しく Joe Strummer のボーカルが好きになれました。しかし、スタミナ切れのないこのドラミング、凄いとしか言いようがありません。しかも、正確で、アドリブがたくさん出てくるから目眩くようなドラミング・トリップ(?)が楽しめますよ~。下手くそ三人衆をきちっとリードしてるしね(笑)。


何よりも素晴らしいのは、録り直しのきくスタジオでなく、ライブでレコーディング以上のことをやってること。

The Clash Live(1980)
http://www.youtube.com/watch?v=U0xYrppLVQM&sns=em

2012/02/20

援護射撃~その壱~

またもや、Topper ネタ。1980 年に Palais des Sports で行われた The Clash のライブです。Topper が活躍した1977~1982 年は、私はまだ中学生から大学に進学する頃で、来日してもどのみちライブには行けなかったと思います。1982 年の初来日の際は中毒がかなり進行してしまい、解雇される年ですから、演奏は褒められるような出来ではなかったとか。


このライブ映像では Topper のドラムが凄すぎて、フロントの三人が木偶の坊に見えてしまいます...。私自身、パンクに興味があったわけではなく、Tommy Gun という曲のドラムを聴いて、Topper が好きになっただけで、フロント三人衆に絶えず不満がありました。なにしろ下手だよ、あんたたち(笑)。


このライブ映像は Youtube で三分割されたものが投稿されています。これを観て驚いたのが、ドラムの勢いが全く落ちないことです。168cm で華奢な身体からは想像もつかないパワーです。もともとジャズ・ドラムを独学で身に付けていたそう。ロック・バンドのオーディションではパワー不足だと言われて落ち続け、人の演奏を観察し、工夫と練習を重ねた結果、ロックに敵うドラムになったのだとか。軽々と叩いているように見えますが、凄い力強さです。上半身が揺らがさず、演奏している姿に品があるのも特徴のひとつだと思います。ベースの Paul Simonon はアドリブがきかないので、ドラムがカバーしている感じです。

それでは、Topper のドラムをご堪能ください。


The Clash Live(1980)
http://www.youtube.com/watch?v=T9I2ss5gF9c&sns=em

憂鬱なあなた

今週末は、『ドラゴンタトゥの女』と『メランコリア』 を観てきました。家では Youtube でロック三昧。土曜は The Clash、日曜は Green Day。暇な大学生のような過ごし方です。

『ドラゴン~』の方は大した出来ではなく残念!リスベット役の Rooney Mara は熱演でしたし、Daniel Craig もまあまあだと思いましたが、原作にあるドロドロした血統のいやらしさ、リスベットの根にある哀しみが伝わってこないんですよ...。脚本に問題ありって気がする。二時間ちょっとで収めるのは無理な小説かも知れません。先々週は私も壊れていましたが、DVD プレーヤーも壊れました。新しいのを購入次第、スウェーデン版の『ドラゴン~』を観る予定です。


『メランコリア』は私にとっては大当たり。冒頭の映像美からして好み。映画中程の Kilsten Dunst のヌード・シーンは惑星との交わりとも言え、とても幻想的で一見の価値ありです。破滅の前の軋みや狂いは、終末を予め感知できる者の微熱のような症状なんでしょう。惑星と交わる頃には、大きなスケールを以て、自分の小ささを推し測り、決定的な事象を受け止められるようになるのかも知れません。

ストーリーが受け入れられなくても、映像だけでも大きなスクリーンで観てください。それだけの価値はあります!誉め言葉になってないけど。もう一度観に行こうと思っています。

2012/02/15

敬愛

ようやく身体のだるさがとれました。今回よく分かったのが、私は普段からて微熱がよく出ているのだということ。暑がりの理由が理解できました(笑)。


(左から)ジョー、ポール、トッパー、ミック

子どものころ、Topper Headon の風貌が何故か怖かったのに、今見ると「怖い」の対極のルックスです。かなりの童顔(笑)。でも、ドラムは凄かった。


(左から)ジョー、トッパー、ポール、ミック

薬物の乱用が度を越して Clash を追い出されたあとに作ったアルバムは、「追い出されて良かったんじゃない?こんな凄いアルバムは Clash じゃ作れないもの...」というのが正直な感想。

当時は常用者のイメージが先に立ち、評価がなかなか付いて来なかったけど、今回じっくり調べてみたら、今は十分評価されていることが分かった。良かった。数年前のインタビューで、クリーンになって体力も戻ったけど、カムバックする予定はないそうで、音楽を目指す若い人たちを支援するなど、チャリティー活動が生き甲斐になっているのだとか。


1979 年の米国でのライブ

一枚目のソロ・アルバム『Waking Up』の最初の曲です。二曲以外の作詞作曲はすべて Topper。もともと独学で R &B やジャズのドラムを勉強したそうなので、自在にスタイルを変えられるのも強みです。この曲はファンク。

Leave It to Luck by Topper Headon(1986)
http://www.youtube.com/watch?v=2PJSOF2dhXw&sns=em

2012/02/12

ネコちゃんと全快祝い

病気ネタの先週一週間でしたが、昨日の夕方にシャワーを浴びている途中で気分が悪くなった後、数時間眠ったら、いつになく身体が軽くなり、6日ぶりに普通にご飯をとりました。一体何だったのでしょうか???


我慢してくれて有り難う♪

今回はネコちゃんにも迷惑をかけたので、昨夜はたくさん遊びました。寂しそうにしていたけど、すっかり機嫌がよくなったので、ホッ。布団の中でも嬉しそうに喉をゴロゴロ言わせて、私の手足を噛んだり、蹴ったりしながら全快祝いしてくれました。脚が傷だらけです...(^^;;

2012/02/10

Flu

昨日は不調のまま病院へ。微熱が引かず、暖房の効いたクリニックのロビーで待つのは辛かったです (^^;; 呼ばれた頃には立つのが精一杯。簡易検査の結果は、インフルエンザ(A型)で、今週いっぱいは休むことになりました。とにかく高熱が出なくなっただけでも、有り難い状況。

母に電話をして、インフルエンザはこんなに大変、高齢者なんだから気をつけるようにね!と言ったら、どうして一番苦しい時に連絡しないの?と言われました。でも、一番苦しい高熱のときって、ほぼ失神状態で眠りこけてしまうから、助けを求める暇がないんです(笑)。まあ、ピンチって、良くも悪くも独り暮らしの醍醐味のひとつですしね(爆)。これが受け止められないようでは、楽しく独身は謳歌できません。

2012/02/09

ダウン

みなさん、風邪は大丈夫でしょうか?私は、月曜の夜中から水曜の朝まで高熱を出して会社を休んでいます。39~40℃の熱が続きましたから、未だに脳が腫れている感じです... (-_-;) 月曜の夜からマカロンを半分食べただけなので、シャワーを浴びたら、途中で目眩を起こしてひっくり返るわで、風邪など引かないに越したことはありません。で、明日は出社しようと思いきや、インフルエンザじゃないことを医者に確認して貰うことが出社条件という、会社からの連絡が...。まあ、そりゃそうですね。インフルエンザの症状を兼ね備えていますから (^^;;


先程、パイナップルをたくさん食べました。子供のころから、風邪のときは、パイナップル、林檎、バナナ、オートミールです...。いやあ、安上がり(笑)。

2012/02/07

Wake-up

週末はエネルギーなし、気力なしと書きましたが、それもそのはず。昨日起床したら、思い切り発熱してました。本人も「えっ、まさか?」という感じ(爆)。バッグの中に転がっていたストナのシリーズの錠剤を飲んで、若干回復。まだ微熱は下がらず...の状態です(-_-;)

感冒薬はうとうとしますから、うとうとできなさそうな Kiss、Clash、Led Zeppelin のライブ映像を Youtube で観ていました。Paul Stanley の歌の上手さに今さらながら感心していたら、夕方に...。

暇を持て余し、メンバーの近況を調べてみたら、John Bohnum、Joe Strummer とEric Carr 以外はみんな生きていました。ひどい薬物中毒でキャリアを駄目にした Clash の Topper Headon が元気そうにしているのにはホッとしました。とっくに亡くなっているかと思っていたので...。三大パンク・バンドのうち、Clash が残ったのは、(1) 音楽をやりたかった、(2) 曲が書けた、(3) 途中でビジネス感覚が必要だと意識した、という点ではないでしょうか。Topper はドラムが上手かったし、マルチプレイヤーで、曲も書けました。要だったと思います。


トッパー・ヒードン(右)、ジョー・ストラマー(左隣)

十代から知っているバンドの近況はまるで同窓会チックだなあ(笑)。PV のドラムは Topper の後任ですが、音源の録音は解雇前だったので Topper の演奏が聴けます(パーカッション、ビアノ、ベース)。

Rock the Casbah by the Clash(1982)
http://www.youtube.com/watch?v=U4HPdWYwgyw&sns=em

(2012/02/09 追記)
こちらのバージョンは相当リミックスされていますが、リズムセクションがより楽しめます↓
http://www.youtube.com/watch?v=15FfWj11uys&sns=em

2012/02/04

沸騰点


素晴らしいクロモスを立て続けに入手しています。2月中に記事にしたいところですけど、今日はエネルギー不足で気力なし。そこで、『ふたりのベロニカ』と同じぐらい大好きなフランス映画『Diva』(ディーバ/1981)から、主人公ジュールが憧れの米国人オペラ歌手シンシア・ホーキンスのリサイタル会場で、こっそり録音しているシーンをご紹介します。そして、この演目のオペラ『La Wally(ラ・ワリー)』のアリア『さようなら、ふるさとの家よ(Ebben Ne Andro Lontana)』が事件を産みます。

主人公を演じる Frédéric Andréi(フレデリック・アンドレイ)の表情に注目を。才能に対する畏敬の念と憧れが、官能の入り交じった恋愛感情に変わる瞬間です。


線の細い俳優は青年期を過ぎると、厳しい時期に入ります。アメリカ人俳優の Denis Christopher もそうでした。Frédéric Andréi は俳優業を早くに諦めたのか、ほとんど情報はなく、監督をした数本の作品名がネットに載っている程度。

"Ebben Ne Andro Lontana" from French film "Diva" (1981)
http://www.youtube.com/watch?v=2hsmoo97CVA&sns=em

2012/02/03

時よ止まれ、君は...

今日は The Stone Roses の名曲『Waterfall』を逆回転させて歌をのせた名曲『Don't Stop』です(笑)。同じように『Elephant Stone』を逆回転させた『Full Five Fathom』も大好きな曲です。五尋の海と意味で、シェークスピアの『真夏の夜の夢』で妖精アリエルの台詞に出てきますね。


余談はさておき、『Don't Stop』はサイケデリックな曲だと思いますが、そう言えばサイケデリックな曲って定義はあるのだろうか...?

ネットで調べた限りでは、雰囲気を指すもので、こうだからこれはサイケな曲という断定はできないようです。雰囲気でよいのなら、サイケな曲で好きなものはいっぱい!と書きつつ、The Byrds の『Tribal Gathering』、T.Rex の『The King of the Mountain Cometh』、Beatles で唯一好きな『Lucy in the Sky with Diamond』、Doors のアルバム『The Doors』 ぐらいしか思い付きませんが...(笑)。


彼らの 1st アルバムは 23 年前の 1989 年にリリースされていたことに、改めてビックリ。当時も新鮮だったけど、今聴いても新鮮。しかし、この 23 年てあっという間だったな...。

Don't Stop by the Stone Roses(1989)
http://www.youtube.com/watch?v=zDHBA-IV0Ew&sns=em

2012/02/01

あれは誰?

今日のクロモスは、フランスの百貨店 Au Bon Marché のトレード・カードです。童謡『ラ・ポリシネル(La Polichinelle)』の歌詞が入っています。トレード・カードの大きさはまちまちですが、7 X 11cm 未満のものが多いです。これは一回り大きい 8. 5 X 12.5cm。とても細かいところまで綺麗に印刷されていて、瞼の陰影まで表現されています。

上品に設えた野外舞台におどけたダンスをしているポリシネルがいます。何度かご紹介しているように、ポリシネルはイタリアの古典喜劇のキャラクター、プルチネッラのことで道化です。先日の操り人形のポリシネルとは対照的な道化ぶり!

舞台には何故か猫が一匹いて、冷ややかにポリシネルを見つめています。右側のスタンドのぶら下がった輪は何なのでしょうか?もしかすると、古典劇のレパートリーのエピソードに関係があるのかも知れませんが、意味は分かりません。またもや、宿題...(笑)。これは鎖らしいのですが、とても細かい輪が繋がっているんですよ、写真では確認し難いかも知れません。


観客は子どもたちばかりで、思わず笑みが溢れている子がいれば、冷ややかに見つめている子、大笑いしている子もいますね。大笑いしているのが分かるように、カードを見ている私たちに顔を向けています。これは着目すべき点です。

左側には細い樹とベンチがあり、ポリシネルは野外舞台で演じていることが分かります。そして舞台の手前には観客がいて、その外側にはカードを見つめる私たちがいて...という、入れ子のような構造が出来上がっているんです。核に当たる部分は舞台ですから、小さな宇宙の中心でポリシネルがおどけているわけです。

それにしても、古びた真鍮のような金彩の飾りが付いた薄緑の舞台、金色の房のある珊瑚色のカーテン(天鵞絨かな?)は素敵!子どもたちのいる空間の外枠も植物文様で飾られているので、入れ子の構造がよりはっきりするかのようです。

ポリシネルは道化らしい衣装で、色違いの帽子が歌詞を記した紙の下を抑えるようにおいてあります。ラッパは小道具でしょうが、童謡をテーマにしているのでシンボルのような印象を受けますね。

このイラストで感心したのが、ポリシネルの影です。煙のごとく消えそうですし、ポリシネルに合わせないで、勝手な動きをしそう。

歌詞を訳してみました(私のフランス語力は低いので参考程度に...)。「あれは誰?/ポリシネルだよ、お嬢さん/あれは誰?/ここにいるのはポリシネル/へんちくりんな格好で/怖がらせているけど/あなたに自作の歌を/聴かせたいんだってさ」

調べてみたら、三番までありました。まあ、たわいも無い歌詞なんですが...(笑)。

2012/01/31

夜も昼も


日本ではトレイシー・ソーンのアルバム『遠い渚(A Distant Shore)』に収録された ETBG の『夜も昼も(Night and Day)』です。イギリスではシングルで発売したそうですが、1983 年の 1st アルバムには収録されていません。

フランク・シナトラが歌うと、たちまち夜のラスベガスになるのに、ETBG のヴァージョンはベン・ワットのギターの音の安らかさと、トレイシーの素人っぽい歌い方や声の堅さが一緒になって、脳内の小部屋で弾き語りする友達デュオのような感覚で聴けます。


彼らのアルバムをリリースしていた Cherry Red には、『Pillows and Prayers』という、レーベル所属のアーチストの曲を集めた素晴らしいアルバムがあります。コンピレーション・アルバムは失敗するものが多いのに、これは例外。

Night and Day by Everything But the Girl(1982)
http://www.youtube.com/watch?v=SXKvdbnjxvI&sns=em

2012/01/29

異形の契り


1906 年にエリーズ(Elise)という女性からパリ在住のリディ(Lydie)という女性に宛てたポストカード。「みんなにキスを送ります(Je vous embrasse tous)」というメッセージが添えられています。

今回の写真はシュールかつグロテスクな幻想趣味のポストカードで、昔の恐怖小説のような趣があります。

ポストカードの下に金色のインクで「女の子は娘(お人形)とポリシネルを結婚させます(Madame Bébé marie sa fille à Monsieur Polichinelle.)」と印刷されています。介添人のように見える女の子はお人形の持ち主、つまり、お母さんなんですね。同じ金色のインクで少女のネックレス、ポリシネルの衣装の飾りが手描きされています。また、薄いピンクと空色で二人の衣装が手彩されています。

背景は手書きのスクリーンで、教会の入り口と通りが描かれています。

左側のポリシネル氏は花嫁に比べると些か年をとり過ぎで、満面の笑みにもかかわらず、身体は硬直気味。写真では分かりづらいのですが、皺だらけの顔に頬紅で施した様子は映画『ベニスに死す』のアッシェンバッハを思い出してしまいました。ポリシネルはイタリアの古典喜劇「コンメディア・デッラルテ」の定番キャラクター(ストック・キャラクター)の道化です。結婚式からかけ離れた奇妙な衣装で着飾っているのも納得ですね。靴を履かず、リボンで飾った足元は操り人形の不自由さを強調するかのようです。竹馬で歩くような感じになりそうです。

さて、主役の見目麗しいお人形は貞淑をイメージさせるウエディング・ドレスをまとい、目を見開いたままです。幸せそうというより、戸惑いや恐怖の相です。不釣り合いな花嫁と花婿は、道の先に何を見ているのでしょうか。

お母さん役の少女はレースのワンピースと花で飾った帽子、リボン付きの白い靴でお洒落をしています。少女だけがカメラに真っ直ぐ視線を据えて、含み笑いをしているように見える...、ここがこの写真の一番怖いところです。

Going to California

寒いですね。昨日は『ミレニアム』を中断して、久々にミルトンの『失楽園』を手に取りました。訳注の多いこと!異文化の作品を理解するには根気が要りますね...。

この数日、たくさんのアンティーク・カードが届きました。感動もののカードがあり、後程、ご紹介する予定です。

Going to California by Led Zeppelin (1971)
http://www.youtube.com/watch?v=luDgb5vVHuA&sns=em

2012/01/25

役割交代のお知らせ

先日、都内は雪が積もりました。私の住んでいるところは、通勤の時間帯には既に道路が乾いていたので、都内の地下鉄の駅から地上に出ると、辺りは真っ白!嬉しい驚き...。


布団の中でもこんな顔をしているのでしょうか...

ネコちゃんは私の身体の上で冷たい手足を温めた後(手足を握って温まるのを手伝います...)、思い切り伸びて眠っていました。そうです、私の身体の上で...です。昨今のネコちゃんたちは、飼い主が温めた布団で、飼い主に温めてもらいながら寛ぐことを好むようです (-_-;)

役割交代、と言ったところでしょうか...。

2012/01/24

イクトゥス

タイミングを逃してしまいました...。今日は、アンティーク屋さんからおまけで頂いた(有り難うございます♪)スウェーデンの小さな小さなヴィンテージ・ポストカードをご紹介します。昔のポストカードは定型が概ね 14cm X 9cm ですが、このカードは 10cm X 7cm です。


今回は裏面から。1954 年 12 月 27 日にウプサラ市内からウプサラ市内へ郵送されています。メッセージの欄には「素敵なクリスマスと新年
を、~より(God Jul och Gott Nytt År tillönskar av )」と予め印刷されています。名前はアルファベートのみなので、男女の区別はつきませんが、表面のイラストを見ると、女の子に宛てているんだろうなと思います。「スウェーデン製(Svensk Tillverkning)」と印刷されているだけで、会社名はどこにも印刷されていません。


横線、あまり見えないかも...

切手はスウェーデン(Sverige)と 10(オーレ/近年まで使われていた補助通貨の最小単位)、誰だか不明なのですが、男性のプロフィールがあるのみのシンプルなデザイン。細かな横線に目を奪われました。


では、表面へ。北欧好きの方が喜びそうなイラストかも知れないですね。カゴにはプレゼント、手には赤い封蝋の付いたグリーティング・カード。分厚い手袋とマフ。雪が降って寒そうですが、足元は素足にブーツ(笑)。ブーツの赤いボンボンがサンタクロースの帽子に合っていますね。緑のワンピースはふかふかの襟とリムが付いていて温かそう。右下に水色のイクトゥス(交差した二本の線で描いた魚でキリストを意味する)を彷彿とさせる魚のマークが添えられています。


紙質は厚くて、ざらざらした感じなので、素朴さが出ています。54 年なので石版印刷ではありません。

葉書からはみ出さんばかりの構図と昔っぽい女の子のイラストが魅力です。

2012/01/23

心に茨を持つ少年

The Smiths の The Boy with the Thorn in His Side のプロモーション・ビデオを発見。ヴォーカルの Morrisey って、昔見ても変だったけど、今見てもやっぱり変。何しろ名前がモリッシーですしね...。メンバーもやる気なさそう。でも、これは名曲だと思います。レーベルは Rough Trade でしたね、懐かしい~。


これ、Truman Capote です

The Boy with the Thorn in His Side by The Smiths(1985)
http://www.youtube.com/watch?v=OFZmPa9AkWw&sns=em

春節、新年好!

みなさま、春節、新年快楽!ここ中華街でも 24:00 から爆竹の音が鳴り響いています。復興が早く進みますように。

2012/01/22

五感

今日はシュールなクロモスをご紹介します。すごく気に入っていて、年末年始のお買い物 No. 1 です。

タイトルは「五感(Les Cinq Sens)」ですが、購入したお店のオーナーの方が「私の五感」というタイトルをつけて販売していたものです。このタイトルに惹かれて、「商品の詳細を見る」をクリックしたと言っても過言ではありません。

少年がラッパを吹くと、猿たちがたちまち現れ、好奇心のおもむくまま、せわしく動いています。


単純なイラストなのに印象が強いのは、少年の無表情とラッパを吹くという行為なのかなと思います。身なりの良い大人しそうな少年がラッパを吹いた途端、現実世界は少年の内部に切り替わり、そこには少年自らが登場します。ラッパは欲望を体現したような猿たちをたちまち呼び寄せ、少年は餌を与えながら、猿の五感を目一杯刺激し、操る奇妙なショウを開始します。

ラ・メゾン・ドレ(La Maison Dorée)というパリにあった百貨店のトレード・カードで、扱い商品としてインテリアやアパレルが紹介されています。背景は 1900 年前後に多く見られる金彩。

私にとって、ちょっと貴重なクロモスです。

Lock It Up in Your Book

昨日は寒かったけど、久々に港周りを散歩。随分歩いて顔が冷たくなったところで、檸檬ティーを飲みにカフェへ。クロモスの記事を書こうと思いながらも、仕事の書類をぼーっと見たり、急いで買う必要のないクロモスを注文したり、アンティーク関係の本を眺めたりで、要は、何だか疲れていることが分かった(笑)。

檸檬を食べながら、一昨日のことを思い出した。重い話を聞かされて、どこか虚ろになっている。自分らしく生きようとすると、人と交流しなくなる。交流したがらないから、聞いた話を不用意にあちこちで話さない、と思う人が周りに増えてきた。実際、誰かに話すことも、仄めかすこともないのだが...。だから、この五、六年は秘密めいた話を聞く機会が多くなった。


マンホールの蓋を開けたら、地球の病みと闇が見える夢を見た。私たちの頭蓋骨の内部も似たようなものだろうか。ダンテの『神曲』やミルトンの『失楽園』を許容できるのは、あくまでも紙の上で展開されるからだ。

あのぉ、ここまで重い話ではないのですが、薄暗い魂に触れるような感覚は否めませんでした。

2012/01/17

幻想詩のような映画


映画『ふたりのベロニカ(La Double Vie de Véronique)』にも素晴らしい曲があります。


作曲は音楽を担当したポーランド出身のズビグニエフ・プレイスネル。歌詞はダンテの詩から採っているので、古イタリア語で歌われているそうです。

私の歌を聴きたくて
ついてきた者達よ
お前達は私の船をひたすら追う
歌いな がら進む私の船の後を
決して沖に出てはならない
私を見失い
途方にくれるであろう
私が乗り出す海は
誰も進んだことのない
果てしない大海原
ミネルヴァが風を吹き込み
アポロンが私を導く
9人のミューズが
大熊座を指し示す


素晴らしい映画で、この20年間、私の一番好きな作品です。多くを語らず、美しい映像によって、幻想詩の中を彷徨うような感覚になります。

La Double Vie de Véronique
http://www.youtube.com/watch?v=dJqUZFunBsk&sns=em

2012/01/15

ラシーヌ賛歌


前のブログで紹介した『ラシーヌ賛歌』を youtube で見つけました。ワーナーの情報では、オックスフォード大学ニューカレッジ聖歌隊(エドワード・ヒギンズボトム指揮)になっていますが、youtube ではケンブリッジ大学の合唱団になっています...。似て非なるもの?でもここまで同じになるのかなあ...?

それはさておき、人による表現が、かくも美しく、崇高になり得るとは!

Cantique de Jean Racine by Cambridge Singers
http://www.youtube.com/watch?v=wKwHiGg21KA&sns=em

3年経過

昨年の大晦日でブログが3年経っていました。前のブログ『フィンランド語学習ジャーナル』と『幻灯館』から数えて3年です。それに合わせて、3歳を祝うアンティークの記念カードを購入していたのに、すっかり忘れていました...。


レネ・クローク(Rene Cloke)のイラストに、植物文様をエンボス加工した金色のシールが大胆に貼り付けられたカードです。クロークは英国で 1905 年に生まれているので、私が敬愛するマーガレット・タラント(Margaret Tarrant)の活躍時期と重なっているはずです。1900 年代半ばに活躍した英国人の女性イラストレーターは何人かいて、絵本だけでなく、ポストカードの制作会社と直接契約して定期的な仕事を確保していました。このポストカードはロンドンで 1851 年に創業した Valentine & Sons の制作です。Valentine 社は 1960 年代に買収され、さらに 1980 年に有名な Hallmark 社に買収されて、名前が消えてしまいます。1994 年には工場が閉鎖され、完全に幕が閉じられました。

手元のカードは 1949 年7月6日にケント州マーゲイトから同じマーゲイトへ送られていま。Miss R. Warrior 宛になっているので、彼女の三歳のお祝いだったのでしょう。

さて、肝心のイラストですが、シスリー・メアリー・バーカー(Ciseley Mary Barker)のようなテイストです。絵本で活躍した当時の女性イラストレーターたちは、必ずと言っていいほど、背中に昆虫の羽がついた小さな妖精の絵を少なからず残しています。流行だったのかも知れません。

欧米には赤い実のなる木が多く、調べてみましたが、葉の形状がどれとも一致しませんでした。鳥の正体も不明...。宿題です(笑)。そして、メッセージが印刷されています。3年の長い月日をかけて、乳児期を脱したことへ一抹の寂しさを覚えるものの、良い子に成長しているから、これで良かったんだのという内容。

2歳、3歳のバースデー・カードはよく見かけますが、他の年齢は記憶にありません。探してみようと思います。

2012/01/14

美しき女庭師

バッグに入れっぱなしだった気の毒なクロモス...。

1900 年前後は共布ではなく、着物の帯のように独立した布でロー・ウエストの位置を飾っていたんですね。こういうファッションのクロモスはたくさんあります。女の子の賢そうな表情が気に入りました。比較的粗い石版印刷ですが、椅子の深紅の天鵞絨の陰影や洋服のひだがよい感じに表現されています。このパレット型のカードは複雑なカッティングと上方を飾る切り込みの模様に特徴と魅力があります(綺麗に撮影できず、残念)。そのせいか、あっさりした絵柄と色合いがよく合っていますね。


フランス北部のリールにあった、チコリ・ドリンクを扱う C. Beriot (セー・べリオ)というお店のトレード・カード。À la Belle Jardinière(ア・ラ・ベル・ジャルディニェール/美しき女庭師風に)というのが商品名です。『La Belle Jardinière(美しき女庭師)』はラファエロの絵画のタイトルでもあり、1820 年代から 1970 年代まで存在した百貨店の名前でもあります。そう言えば、「à la jardinière」は野菜の付け合わせのこと。料理好きのボーイフレンドが教えてくれました。素敵な言い回しだと思いませんか? ところで、表の右下の余白部分に謎の星形文様が、見えにくい色で印刷されていて、その調査に乗り出しました。でも、解ける謎だとは思っていません(爆)。


ボーイフレンドは、フランスでよく飲まれるチコリ・ドリンクは埃っほい味がして嫌いだそうです。同感。「でも、もしかして、あなたが知らないだけで、美味しいチコリ・ドリンクがあるんじゃないの?」と訊いたら、「ないっ!」とのこと(笑)。

2012/01/08

山猫通信は没

最近、あるフランチャイズのカフェに入り浸っている。一番の理由は、檸檬ティーに檸檬の薄切りが付いて来るからだ。この手の殆どのカフェでは、小さなパックに入った檸檬ジュースを出して来るのでがっかりしていた。

檸檬の薄切りを紅茶にしばらく浸して食べると、来て良かった~と思う(笑)。お店は広いし、天井には必ずメダリオンが取り付けられ、シャンデリアが吊り下げられている。ガーランドやリボンの飾り金具や Toile de Jouy の布を飾ってあったり、小さな正方形のテーブルはボルドーにも見える赤茶色。本来、お洒落に見えるインテリアのはずなのに、何故か安っぽい。ついでに、サンドイッチやペストリーがことごとく不味いことも付け加えておこう。


けれども、檸檬の薄切りは何にも替え難く、そのうえ、長居もできる。『ミレニアム』の半分はこのカフェで読んだ。周囲は勉強中の近所のサラリーマンが多いから、とにかく静か。空腹を別の店で満たして、実は今まさにレモンの薄切りを堪能したばかり。人が五十人はいるのにこの静けさは何なのだろう。

昨日から個人誌作りの作業を始めた。誌名の候補は思い入れの強い自作の言葉を採ることにした。当初は、母にときどき送っていた『山猫通信』(→自作の俳句を並べただけの紙切れ)にしようと考え、母に打ち明けたところ、「え~っ、冗談でしょ???」という判りやすい反応を受け、即座に取り止め(笑)。

そう言えば、郵送代、封筒代も必要だ。俳句関係者に送るにしても、開封してもらえるように工夫もしないと。あれ、結構、忙しいかも (^^;;

リスベット

推理小説を久々に読みました。『ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女』です。冬季休暇の最終日(水曜日)、暇潰し(千円程度の価値だと値踏み)に『ミッション・インポッシブル』を観たときに、前とは違うヴァージョンの『ドラゴン・タトゥーの女』のトレーラーが流れました。無性に原作が読みたくなり、通勤時間をフルに使って、あっという間に読み終えました。細かなことを書き連ね、核心に届くまで膨大な頁を割くのは京極夏彦で慣れているので平気でしたが(笑)、冗長さは否めません。犯人は上巻で何となく目星が付きますし、小説の核心は書けませんが、こうなるだろうと見えて来ます。一方的な主人公の勝利にも不満が残るところです。


主に、主人公のミカエルとリスベットだけで保たれている作品だとは言え、『ディーバ』と重なるような魅力があります。ピカレスク・ロマンに通じるリスベットの存在があるからでしょう。リスベットというキャラクターに出会うだけでも、この小説を読み切る価値はあると思います。また、否応なく社会の矛盾に倒される弱者への鎮魂歌であること、その弱者のひとりであるリスベットによる痛快なまでの冷めた反撃は、読者の琴線に充分触れるテーマとモチーフだと思いました。小説の締めくくりはリスベットに新たな現実を突き付けますが、次の作品ではどうなって行くのでしょうか。

ところで、スウェーデン語版の表紙はまるで『ツインピークス』...。

では、『ミレニアム2』を買いに出かけます。ついでに、懐かしいスウェーデン語を聞きたくて、数年前に制作されたスウェーデン版の DVD『Män Som Hatar Kvinnor』を予約しました。スウェーデンのサイトでは評判は上々なので、すごく愉しみ → 結局、夢中...。

2012/01/07

子供の物理学~その6『遠心力』~

最終回は『遠心力の応用(Application de la Force Centrifuge)』です。他のカードより、やや判りにくい絵なのですが、どうもフラフープに水を適量入れた硝子コップを取り付け、フラフープに結んだ紐を持って、カウボーイのようにフラフープを頭上で振り回している様子なんだと思います。遠心力でコップから水がこぼれない、ということなのでしょう。絵に表すのは難しそうですね。何だか、理科少年が芸を実演しているように見えます...。


樹を利用したベンチにいる女の子は双子ではなさそう。お揃いの麦わら帽子がブロンドに映えています。小さな女の子がフラフープを持っていますが、フラフープの歴史は古代にまで遡るほど古く、百年前後前のトレード・カードでもよく見かけまるモチーフです。私が知っている限りでは、女の子たちが手にしているので、この頃は、男の子より女の子の間で盛んだったのかも知れません。

よく見ると、小さな女の子は硝子コップも持っています。この時代の硝子は今のような技術力で製造されていないので、特に普段使いの製品には気泡が入っている場合が多いです。お洒落なものだと、化学薬品を使って表面処理をしながら、細かな模様をエッチングしてあります。繊細という言葉がぴったりです。だから、理科少年は気泡入り硝子コップを使っているものと思われます(笑)。

庭はかなりの広さのようですし、右上のベランダなどを見ると、当時の中産階級が相当な階級であることが想像できますね。

2012/01/04

物理は苦手

今日は『子供の物理学』の最終回のはずだったのですが、若干、調べることができましたので、明日に延期します。

近所は横浜の官庁街なので、お昼のカフェには仕事初めの方がたくさん!明日は我が身です(笑)。

母が喜んでくれると思うので、句集を出したいと思いつつ、寡作の私には難しく、俳句・随筆(アンティーク・カードの魅力についても!)を含む個人誌を出そうかと思案中。人付き合いが苦手だし、五十部程度を半年に一度ならお小遣いを節約すれば出せそう???コビー+ホッチキスどめの簡易製本で、20頁ぐらい、無料配布なら扱いも楽。


お母さん、有言実行だよ~

(^^;; では、印刷屋さんへ相談に行ってきます♪

2012/01/03

子供の物理学~その5『虹を創ろう』~

今回は『太陽光のプリズムとスペクトル(Prisme et Spectre Solaire)』のカードです。1904 年当時にはブラインドがあったようですね。太陽光が部分的に差し込むように、下ろしたブラインドの一部に細工をします。さらに、太陽光を制限的に使えるように、二ヶ所に穴を空けた板を使います。穴から差し込む太陽光を、ひとつはそのままテーブルの黒い紙に落とし、もうひとつはピカピカの硝子コップで反射させて、その反射光をそのまま落ちている太陽光の上に重ね合わせます。黒い紙とコップの間に虹が現れました!


理科少年がいつもより慎重な面持ちで実験に臨んでいます。薄暗くした部屋に小さな虹が現れるのは、天体の神秘に相応しいシチュエーションですね。女の子は宝石を見るようなうっとりとした眼差し、男の子たちは科学への興味が益々増した様子。右側の女の子はアン・シャーリーの憧れのようなワンピースを着ています。膨らんだ袖、フリル・カラー、ベルト代わりのたっぷりした赤い布は光沢がありそう。お人形もほぼ同じファッションです。この頃は、女の子とお人形を組み合わせたポストカードやトレード・カードが山ほど作成されています。玩具が少ない時代ですから、中流家庭ではテディベアとお人形が中心の遊びだったのかも知れません。

前売りを買いに

冬季休暇も明日を残すのみとなりました。バーゲンは初日の昨日が湧いたようで、今日は思ったより人出が少ないみなとみらいです。

映画『フェアゲーム』は銀座で11時の回だけだということが分かり諦めました。そして、そのお小遣いを『ドラゴン・タトゥーの女』の前売りに回しました。スウェーデンの小説が世界的に売れることは殆どなかったので、興味深いです。


まさか、辰年に合わせて公開ってことはないよね...

ところで、スウェーデン語の原題は「Män Som Hatar Kvinnor(女を憎む男たち)」なのですが、正直なところ、映画や英語翻訳の飛躍したタイトルに驚きました。加えて、同じ監督の作品とは言え、予告編はあまりに『セブン』(→好き)テイスト。いかがなものか...。でも、すでに公開した米国での評価は概ね高いので、期待は高まっています。

子供の物理学~その4『噴水』~

今日は『噴水(Source Jaillissante)』です。お天気が良いので、庭へ出ましょう。水は低きへ流れるものですが、ホースなどの管を通して一工夫すれば、水は上へ向かって移動します。注目は二つに割った大きな南瓜!中をくり抜けば、立派な器にして実験道具になります。片方は三又みたいな樹の上に置き、水をどんどん注いで行きます。ホース内の水の量と注水量がある限界を越えました。真ん中で座っている男の子がホースを握り、ホースの直径を狭めることで、水の流速を一気に加速させます。手作りの「噴水装置」から勢いよく水が噴き上がりました。噴水のプールは南瓜です。


野生の草花が赤・白・ピンクの花をつけて、庭を彩っています。春の終わりから初夏の風景なのか、草が繁り、双子の女の子は麦わら帽子に半袖。男の子たちは学校から帰って来たような洋服です。昔はセーラー・カラーの服は男の子たちの間で頻繁に着用されていて、記念撮影のアンティーク写真でもよく見かけます。

最後に如雨露で水を運ぶ、実はこの実験で最大の功労者の女の子に注目してください。小さな赤いボンボンの縁取りがあるチュール・レースのハイカラーがお洒落ですね。こんなお洒落な子を働かせるとは!(笑)

2012/01/02

回転木馬


毎年恒例の二日の日帰り帰省。母も兄も元気だった、母が亡くなった父のことばかり話していたのが気にかかる。夫婦仲が悪く、やはり未だに良いことはひとつも言わない。その話題が延々六時間も続くのだから参ってしまった。いつものことだが、何十年も引きずる怒りや恨みを昨日のことのように語るので、黙って聞くしか選択肢がないのだ。話しを聞くのは子供の頃からの慣いでもあるし、母が私に優しい言葉を期待しているのではないことをよく分かっているからだ。娘としては「何十年もいい加減にしてよ」と言いたくなるが、それが酷だということも理解している。私と違って怒りの対処法を知らないのだなと、気の毒にも思うことも多い。母のもともとの性格は明るいし、何よりユーモアの分かるところが素敵だ。けれども、一変した彼女を基本的な性格に戻すのは難しく、怒りと恨みで膨らんだ風船が萎むのを待つしかない。残りの人生を穏やかな気持ちで過ごしてほしいと願うが、そうも行かないようだ。


今日の話しで、唯一心が和んだのは、父方の祖父の話だった。音楽家志望で、田舎で音楽の教師をしていた祖父は兄と私が遊びに行くたびにピアノを教えてくれて、夕刻になると、彼の好きなシューベルトやバッハの曲を弾いてくれた(これはよく覚えている)。初孫の兄と私を喜ばそうと、当時は珍しかった『眠り姫』の飛び出す絵本やら、スイスのホワイト・チョコレートの入手に相当な時間を費やしていたことを、今日初めて知った。


いい思い出、悲しいこと、怒りや恨みは、メリーゴーラウンドの木馬のように起伏を繰り返しながら、決してレールから外れることなく走り続けている。母の胸のうちの止まらないメリーゴーラウンドだ。

2012/01/01

子供の物理学~その3『紙の人形を踊らせよう』~

今日は『紙の人形のダンス(Poupées de Papier Dansantes)』です。二冊の分厚い本に硝子板を挟みます。硝子板とテーブルの間は2~3センチ程度の隙間が空くようにし、隙間の高さより小さな紙の人形を寝かせます。硝子を布で強く摩擦し、静電気を起こせば、ほら、人形が立ち上がって踊り始めました。

あまりの驚きと面白さに子どもたちは紙の人形に目が釘付け。本物の人形は床にほったらかし(笑)、木馬も知らん顔されています。理科少年が披露する魔術師のような妙技は大成功でした。


この部屋はグリーンが基調で、右奥の小さな暖炉が慎ましやか。質素な部屋に見えますが、子どもたちのファッションは当時の中流階級という感じがしますね。左の女の子のエプロン・ドレス、もう一人の女の子のフリル・カラー、男の子たちのニッカー・ボッカーなど、このシリーズは、子どもたちの洋服を眺めるのも楽しみのひとつです。

しかし、紙の人形が形代に見えます...。

謹賀新年

明けましておめでとうございます。今年は中華街のカウントダウンに参加し、先程、帰宅したばかりです。長年住んでいる町なので、爆竹と南方系の獅子舞はもはや必須です。

佳き一年になりますように...。