少年の部屋。赤いセーラーカラーのジャケツに赤いタイツがこの部屋の主人。ここで、日々、科学に胸をときめかせながら、頭を悩ませているのでしょう。
今日は同級生二人を招いて、均衡の不思議を解き明かそうとしています。「均衡とは真の中心を探すことなんだ」と少年が熱っぽく語ると、「この場合、中心とは必ずしも真ん中を指すわけじゃない。そう、ぐらつきそうでぐらつかない、針でつついたぐらいの小さな点を求めるんだ」と哲学者気取りで友だちが続けます。
テーブルに置いた教材は下の薄茶色の箱に入っていたものを組み立てたのでしょうか。
壁側に目を向けると、物理を含む科学を扱った小難しそうな本、毎晩、飽かずに眺める図鑑やらが並んでいそうな本棚。下の扉を開けると、教材や手作りの実験道具がぎっしり詰まっていそう。
ヨーロッパと北アフリカの地図の横には、お父さんから譲り受けた地球儀があります。真鍮のずっしりした台座の上で地球はぐるぐる回っています。赤いビロードのカーテンを開くと、アフリカ産やアジア産の珍しい植物が花を咲かせていて、植物学者のように拡大鏡で花弁を見つめたり、昆虫学者のように花の周りに集く虫を観察することもあります。
でも、あくまでも、僕は物理学者になるんだ!少年の夢でいっぱいになった日記帳は今にも鳥のごとく羽ばたきそうに見えます。