大学の卒論は『不思議の国のアリス』をテーマにしました。卒論の出来映えはともかく、幼稚園のころに絵本版アリスに出会ってからずっと取りつかれています。テニエル卿が描いた挿し絵のアリスの無表情と女の子らしい洋服が大好きになって、当時はお話しよりも見た目先行でした(笑)。中学生になって大人版『不思議の国のアリス』を読んだとき、少し混乱した記憶があります。病的な夢に思えたからでしょう。大学生のときは、自分(読者)の夢にアリスが出てきて、アリスの見た夢を見ているかのような入れ子の構造に招き入れらた感覚を味わって、中学生のときとは違う混乱がありました。
長い間、私にとってアリスの姿はテニエル卿の挿し絵がすべてでした。それ以外のアリスの挿し絵やイラストは受け入れ難く、頑なにアリス像を守ろうとしていました。どこか自分の聖域みたいに感じてたんです。
ところが、30歳を大分過ぎたころ、マーガレット・ターラントの挿し絵に出会って、私の了見の狭い聖域は呆気なく崩壊しました。ターラントはアリス以外の作品でも素晴らしい幻の世界を見せてくれます。こちらは別の機会にご紹介したいなと思います。
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先日はこの二枚の挿し絵を購入しました。1920 年代にイギリスで出版された『不思議の国のアリス』の挿し絵です。昔の本は状態が悪いと、挿し絵のページを切り取って販売することがあります。