コミック版の『陰陽師』の四巻に、天才楽士たちの霊的体験にうち震えるような感動を覚えた源博雅が笛を吹きながら月夜の都を散歩するくだりがある。その夜の月の美しさも手伝ってか、涙など流してじ~んとしているわけなのだが(かなりコミカルに描かれている)、この数日はこのシーンを繰り返し読んでいる。私の中から揮発寸前なのはまさにこの境地だと思うから。実は四巻の第一話の表紙、博雅が笛に息を吹き込むイラストを額に入れている。息を吹き込むことで笛はそのたびに生命を戴くのだろうか、それとも自己の息(生命の一部)を献上することにより、笛を介して大いなるものと交歓しているのか...。憧れの境地である。